―かねてから真澄はそんな思いで地元の逸品を探し続けてきました。
昨年ご好評をいただいた信州ならではの絶品蕎麦、今年もお届けいたします。

地縁がつなぐコラボ 真澄オリジナル 新酒・新蕎麦セット

「新酒とともに味わっていただけるような地元産の美味しい蕎麦を探しているんですが」と相談を持ちかけた髙山製粉の専務取締役・髙山俊彦さんが、「それなら是非一茶さんの蕎麦を」とご紹介くださったのは、八ヶ岳山麓で蕎麦を栽培している小林一茶さん。地元では誰もが知っている優秀な蕎麦農家で、平成14年には全国蕎麦生産優良地区表彰を受けています。「この粉で蕎麦を打ってもらえませんか」と持ち込んだ松本市の手打蕎麦・榑木野(くれきの)の社長・吉澤文武さんも、「小林さんの粉は全然違うんです。是非やりたい」と大喜び。

いろいろなご縁がつながって、地元・八ヶ岳山麓で小林さんが育てた新蕎麦を諏訪市内の髙山製粉さんで石臼挽きにし、松本市の榑木野さんに打ってもらった、真澄オリジナルの絶品蕎麦ができあがりました。

小林さんはもともと、諏訪に多い精密機械メーカーのサラリーマンでした。定年退職後に農業を始めたのですが、ちょうどその頃は、地区のほ場整備が終わり、特産のセロリやパセリの栽培も、土地が痩せてきたり農家の高齢化・後継者難の問題が出てきたりと転換期を迎えていた時期。小林さんたちは勉強会を立上げ、先進地の視察や農家へのアンケートをかさね、2年後、「転作作物として蕎麦はどうか」というアイディアを得ました。
それからは、持ち前の好奇心と精密工業で学んだデータ分析や品質管理の手法を駆使して、蕎麦のことを徹底的に研究。土づくりに始まり、植物としての蕎麦の特性、さらに受粉してくれるミツバチの性質まで研究したその成果は、大学教授も驚くほどの豊かな内容となりました。
その小林さんの蕎麦畑に案内していただくと、ちょうど白い蕎麦の花が満開。八ヶ岳山麓の素晴らしい環境の中、高原の風にそよぐ様子は絶景です。この辺りは朝晩の寒暖の差が大きく、柔らかい西日が長時間当たり、また土は火山灰でミネラルが豊富と蕎麦の栽培に適した土地。そこに小林さんの手間を惜しまない仕事と独自のデータ分析や研究に裏打ちされた理論が加わって、絶品の蕎麦ができるのです。
ものづくりに手間を厭わず、理論好きで、これと思ったらとことん突き詰めていき、良い結果が出ても満足せず常に工夫を積み重ねてさらなる高みを目指す―まさに典型的な諏訪人! これだけの成果を上げていても、「評価はお客様が決めるもの。これからもお客様の声を聴きながら作っていきたい」とおっしゃるのにも感銘を受けました。
霜に当ててから収穫する小林さんの蕎麦は甘みがあり、香り高いのが特徴。大切に育てられた蕎麦の実は、「髙山製粉さんは本当にこだわり屋。全面的に信頼しています」と小林さんが絶賛する髙山製粉さんの石臼で粗挽きにされ、少し黒めで星が飛ぶ素朴な蕎麦粉に姿を変えます。

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新蕎麦が入荷し始める10月下旬、諏訪大社上社の近くにある髙山製粉さんに、専務の髙山俊彦さんを訪ねました。早速、倉庫にご案内いただくと、このところ涼しくなってきた諏訪の外気温より更にひんやり。15℃くらいに保つのが一般的だそうですが、髙山製粉さんの定温倉庫は7℃に保たれており、玄蕎麦の水分量が最適になるよう湿度も厳密に調整されていました。

入荷したばかりの新蕎麦の袋がたくさん積んである中、ありました、小林一茶さんの名前入りの袋! 他の生産者の方のものと比べてみると、粒が揃っていて大きく、殻につやがあってきれいなのがよくわかります。「一茶さんの蕎麦は見てきれいだし、味が濃い・粘りがある・甘味が強い・風味が良い、と味も格別です」と髙山専務。

一茶さんをはじめ、蕎麦農家との連携も緊密で、農家にはいろいろ要望を出して応えてもらっているそうです。最も端的な要望は「蕎麦のコシヒカリを作ってくれ」というもの。そのためには自らも研究を重ねながら、種蒔き前に良い種子を貸したり、土作りのために有機肥料の研究を勧めたり、乾燥・水分調整の数値を決めたりといろいろな提案をしています。本社内の本棚にある資料・文献を見せていただきながらお話をうかがいましたが、どの資料にもたくさんの付箋が貼られ、ラインマーカーやアンダーラインがあちこちに引かれていて熱心な研究の一端を垣間見る思いでした。
製粉工場に入ると、蕎麦を挽く石臼がたくさんありました。驚くのは、石臼4~5機が1単位となって、様々な蕎麦粉を挽き分けていること。お客様であるお蕎麦屋さんの各々のニーズに合わせて、石の厚さや臼の回転数など細かく変えて挽いているそうです。小林一茶さんの蕎麦専用の石臼もあり、他のものと混ざらないようになっていました。
「石臼で挽いた蕎麦粉は、電子顕微鏡で見ると角がとれて丸くなった粒子に細かい粉が散りばめられたような感じなんです。熱がかからないから風味も良いし、石臼の目立てによっても変わってくる。本当に奥が深いです。」髙山さんもまた、より良いものを求めて飽くことのない、諏訪人らしい諏訪人でした。

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松本市と安曇野市に4店舗を構える榑木野さんは、石臼挽きの粉を使った完全手打のお蕎麦屋さんです。社長の吉澤文武さんは、蕎麦を語っていただくといつまでも止まらないほど。語るべき内容も実績もたっぷりのプロフェッショナルです。髙山製粉の髙山専務も「真澄さんからお話を聞いて、よくぞ榑木野さんに声をかけたと感心した。こういうことができるのは吉澤さんぐらいです」と技術の高さに太鼓判を押しています。

ふだんお店で出している蕎麦にはオリジナルの蕎麦粉を使っているとのこと。外側の甘皮部分・中心部のいわゆる“更科蕎麦”に使う真っ白な部分・その間の部分の3種類を独自の割合で配合したもので、香り高く、甘みがあり、なおかつコシもあるという人気の榑木野蕎麦が出来上がります。今回は小林一茶さんの蕎麦を使って特別にちょっと田舎風に仕上げてくださいました。甘皮付きの丸抜きの実を使ったこの蕎麦は、更科タイプに比べるとややコシは少ないものの、より香りが強く甘みのある蕎麦に仕上がります。

息子さんの祐介さんもまだ24歳と若いながら、高校生の頃から蕎麦を打っていて、蕎麦打ち8年のキャリアの持ち主。「若い人は“正直な蕎麦”を打ちますね。自分もそうですが、歳をとると体力が続かなくてどうしてもいじってしまう。小手先になってしまいがちなんです。」という吉澤社長もまだ46歳でいらっしゃるのですが、平均年齢22歳という打ち手たちが踊るように打つ様子を拝見すると、祐介さんの「全身を使って打ってます。体力使います。」という言葉にも納得です。
特筆すべきは蕎麦打ちに使う水。すぐ近くにわさび田もある恵まれた環境の中、乗鞍から来ているという井戸水を使っています。蕎麦粉や水には繊細なこだわりを見せながら、打つときは大胆かつ無駄のないダイナミックな動き。このコンビネーションが美味しい蕎麦に結実するのだ、と納得した一日でした。

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